焙煎 炊飯 キャラメリゼ

はじめちょろちょろなかぱっぱ。
土鍋炊飯のコツを示したこの言葉、一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。
最初は弱火で全体を穏やかに温め、途中で一気に火力を強めてふかせるのが良い、ということである。

コーヒー豆の焙煎を始めた当初、様々な本を読んでこれと同じようなことが書かれているのを多く目にした。
すなわち、焙煎においても最初は弱火(または遠火)で「水抜き」をし、水分が抜けたところでグッと火力を強めるのが良いのだと。
しかし、現在の僕の焙煎スタイルはこれをきれいに反転させたようなかたちになっている(厳密には浅煎り・中煎り・深煎りで火のいれかたを変えているので一概には言えないけれど、特に深煎りのプロセスにおいて)。
マニアの方々からのツッコミが怖いので詳細は省くが、要するに「弱火→強火」が善しとされているところを「強火→弱火」でやっているということだ。

僕は三年ほど前から米を土鍋で炊いている。
そして炊飯においても同じことをしている。
「はじめちょろちょろなかぱっぱ」を意識してうまくいった試しがない。
強火で一気に沸騰までもっていき、弱火でじっくり炊いていくというスタイルに落ち着いているのである。

もちろん焙煎も炊飯もこれが正解なのかどうかはわからない。
今現在、自分の中でうまくいっているのがこのスタイルだというだけのことで、これまでも様々な変遷を辿ってきたし今後もどんどん変わっていくと思う。
ただ、この類似点が個人的にはとても面白い。

さらに。
当店にお越しいただいたことのある方はご存知かと思うが、星屑珈琲では付け合わせとしてコーヒーにナッツのキャラメリゼを添えている。
正直に申し上げて、ナッツ類は原価も高いし手間もかかるしけっこう大変なのである。
ではなぜやめないのか?
焙煎に似ているからである。

砂糖と水飴と少量の水を火にかけて溶かし、ナッツに絡めながら熱していくわけだけれど、しばらくすると水分の蒸発とともに一度溶けたはずの砂糖が再び結晶化する。
ほんの数秒で全体が一気に白くなる様にはマジカルな趣があり、僕はこれを「1ハゼ」と呼んでいる。
さらに熱していくと、再結晶化した砂糖がまた溶けはじめる。
そして茶色く色づきだす(2ハゼ)。
そこからが正念場。
火を止めるのが早すぎると結晶のザラつきが残り、遅すぎると鼈甲飴的ベトつきが出てしまう。
このタイミングを見極める緊張感。
そう、まさに焙煎と同じ感覚!
もうお分かりであろう。
キャラメリゼの加熱も当然のごとく「強火→弱火」である。

ああ、長々と書いてしまった。
昨日お客さんにクルミのキャラメリゼを褒められてとても嬉しかったのだ。