流行ると流行らない

自分としてはそんなつもりがなくとも気が張っていたようで、開店からずっと浅い眠りが続いていました。その反動でしょうか、久々に15時間ほどの睡眠をむさぼってしまい、せっかくの休日が台無しです。

当店にリピーターさんが多いとは既に申し上げた通りでございますが、あれから一週間、「すごく多いなあ」と感じております。
これまでの営業日数は12日。
そんな短い期間に、2回どころか3回4回、はたまた5回とご来店いただいている方が何名もいらっしゃいます。
心底ありがたいと同時に心底「なぜ?」と思います。
修行もせず、師匠もおらず、接客の経験すら乏しい男が好き勝手やっているだけの底の浅い店です。
いつ愛想を尽かされるのだろうか。
喜びは常に不安と表裏一体です。

夕方に目覚めた休日、夜な夜な実家近くのバーへ行きました。
渋くてお茶目で格好いいマスターがお一人で切り盛りされている、暗くて静かで素敵なお店です。
僕がぽつりぽつりと当店の話をしていると、マスターはこんなことを仰いました。
「バーは流行ると流行らなくなる」
曰く、静かな場所を求めているお客さんは、その店の席が埋まれば埋まるほど足が遠のいていく。
パタリと来なくなり、でもしばらくして店が苦しくなった頃にまた戻ってくる。
そしてまた繁盛する。
来なくなる……。
良い時・悪い時の波が繰り返し続くのはこの商売の宿命なのだと。
昔、先輩に教わったのだそうです。

わかるなあ、と思いました。
お客さんの立場として、僕自身がそういう人間だからです。
空いている店が好きなのです。
賑やかで活気のある店は苦手です。
だからこういう店を始めたわけです。
一方で、商売としてはなんともジレンマなコンセプトだなあ、と自分で思います。

先週は大変ありがたいことに一度だけ満席になりました。
でも勘違いしてはいけません。
営業時間の大部分、星屑珈琲はずっと空いています。
そしてみなさまのお越しをお待ちしております。
悩むにはまだまだ時期尚早ではございますが、満席になってもなお静かで居心地の良い空間というのは作れないものか、ぼんやり考えながら営業して参ります。