6/5 – 7/2


7/1で星屑珈琲は開業から6年になります。
しかし、コロナ・ビルの大規模修繕工事・店主の眠り病によって、そのうち1年分くらいはまともに営業できていないので体感的には5周年と言った方がしっくりときます。

思えば6年間、店内イベントみたいなことを一度もやっていません。
そして今後もやる予定はありません。
開業準備中は色々と妄想したものです。
展示・コーヒー教室・読書会・フリーマーケットなどなど。
しかしいざ店を始めてみるとまるで食指が動きませんでした。
自分らしいなと思います。
小学校の運動会、あるいは高校の文化祭。
「お祭り」に燃えるタイプか否かで、おそらくこういうのは大人になる前から既に向き不向きが確定しているのだと思います。
もちろん私は冷めていたタイプ。

一方、現在親交のある数少ない友人・知人には「燃える」タイプの人が多いように思います。
傍から見ていていいな、素敵だな、と思いますし、おそらく燃えられた方が人生楽しく豊かになるような気がします。

とはいえ所詮屑は屑。
輝く星への憧れは胸に抱きつつ、不燃ゴミにしかできないことを今後も模索して参ります。

5/1 〜 6/4

今年のゴールデンウィークは私用でお休みをいただきます。
もしご来店を予定されていましたらただただ申し訳ございません。

24〜25歳の頃、東京で短期のアルバイトを転々としながらフラフラとその日暮らしをしていた時期があります。
そんな中、データ入力かなにかの仕事で派遣先に出向いたところ初日からシステムがダウンして約5時間ひたすら待機、という日がありました。
そこでたまたま隣り合わせた同年代の男の雰囲気に自分と同じ匂いを嗅ぎつけた私。
話してみると「なんと」というか「やっぱり」というか、小説家の保坂和志氏 が好きだという共通点が見つかりました。
それがM君との出会いです。

ただ好きというばかりでなく、M君は保坂和志(の小説世界)的生活をしていました。
東中野だったか下落合だったか中井だったか、たしか私も一度お邪魔しましたけれども、古い戸建を数人の友人と共同で借りて暮らしていたのです。
その家には日々さまざまな人が遊びに来るだけでなく、近所の猫も気軽に出入りしているのだとか。
青春ものの日本映画や若手ミュージシャンのPVに出てきそうな、錆びた物干し台の似合う小さな屋上もありました。

少し前までは〈多くの古書店主を輩出している有名な古書店〉でアルバイトをしていた。
今はフリーターだが自分も将来は古本屋をやりたい。
最近はフリーマーケット等のイベントに出店して自分の本を売ったりしている。
M君はなんだか物語の中の人みたいでした。

今になって冷静に考えてみるとM君と過ごした期間というのはとても短く、酒を酌み交わした回数も片手で足りる程度だったのかもしれません。
しかし東京での日々を思い返す際、不思議とM君の顔はわりと序盤に出てきます。

最後に会ったのは2016年。
サラリーマンだった私が中目黒の古書店で出張コーヒーをさせてもらった日だったと記憶しています。
その時点で5〜6年ぶりの再会、共に30歳を越えていました。
不慣れ且つせわしない環境で二三の言葉しか交わせませんでしたが、今は(たしかWEB系の)定職に就いているのだと聞いて「やっぱり」と思いました。
幻滅したとかそういう意味ではなく「30だしそりゃみんなまともな大人になっていくよな」という、どちらかというとむしろ置いて行かれたような気分で。

そこから特に連絡を取り合うこともなくさらに7年が経過し、時は2023年4月。
年に数回しか投稿されないM君のTwitterに動きがありました。

「古本屋を開業しました」

「なんと!」と同時に「やっぱり!」と思いました。
それは激しく嬉しいタイプの「やっぱり」でした。

後付けだと言われればそれまでですが、最初に嗅ぎつけた自分と同種のあの匂いは「勤め人が勤まらない人間」の匂いだったのだと思います(失礼)。

きっと滋味深い古書店になると思います。
古本屋 汀線 https://www.teisen-books.com/

さっそく『記憶のつくりかた』という詩集を買いました。
私の記憶力はまるで信用ならんので、この文章でも意図せず無自覚に「つくって」いる部分があるかと思います。
あしからず。

古書好きのあなたはぜひ一度覗いてみてください。

#星屑珈琲

4月

夜の冷え込みも和らぎ、深夜帯に街を歩く人の数も増えて参りました。
毎年なんだかんだ4月中旬までは店のストーブを付けることがあるのですけども、例年より早く散った桜を見てもどうやら今年はもう寒くならない模様。
なので星屑は早めのサマータイムを導入します。
営業時間は15:00 – 23:00。
昼行性の皆さま申し訳ありません。
いかんせん店主が夜行性なもので、この営業時間が生活リズムに最もフィットするのです。
10月あたりまではこのまま行くつもりです。

弊店はあまりお客さんと喋るタイプの店ではありませんけれども、3月は就職・転職・転勤に伴うお別れの挨拶がたくさんありました。
北海道・宮城・埼玉・千葉・東京・神奈川・静岡・富山・福井・京都・大阪・福岡・宮崎……。
約20名ものご常連さんが旅立って行かれました。
一つの仕事が長続きせず、職場を転々とする人生を送ってきたダメ人間の私は(いつのまにかこれが一番続いている仕事になってしまった)ついつい「がんばって」ではなく「無理はしちゃだめよ」とか「なんか違うと思ったら辞めちゃえ」みたいなことを言ってしまうのですが、皆さん私と違って優秀人材なので放っておいても各地で花を咲かせることでしょう。
屑は名古屋の片隅からご多幸をお祈りしております。

3/1 〜 4/2


3月前半は地獄の確定申告に勤しむため休みが多めです。

皆さまのご協力のおかげで妖怪・小銭乞食はどこかへ消えていきました。
今後1年は安泰です。
誠にありがとうございました。

さて、2月はとても忙しくさせてもらいました。
対応が追いつかないことも多く、不快な思いをされた方も多かったかと思います。
このよろしくない状況が続くようだと、ついに弊店もアルバイトさんを募集することになります。
しかし私は早まりません。

「もう1人は限界、誰か雇わないと死んじゃう!」

急に暇になる

「おっと、危うく自分の給料がなくなるところだったぜ!」

このループを繰り返してきた5年間だからです。

この春、人の動きはどうなることでしょう。
星屑がアルバイトを募集するか否かは皆さま次第。
一度くらいは募集してみたいので3月も店主のキャパシティを越えにきてください。

※ まだ募集してないのでお問い合わせにはお応え致しかねます。

2/6 〜 2/28

どうも、ごぶさたしております。
妖怪・小銭乞食です。
およそ1年前に心優しき皆さまから大量の小銭をご提供頂きました。
ずしりと重い、一生分の100円玉と一生分の50円玉。
こんなにあっても使いきれないよ!
なんて思ったおいらが甘かった。
小商いとは恐ろしいもので、100円50円共に底を突きつつあります。

年末の大掃除でサッシの隙間から出現した50円玉、畳の継ぎ目に突き刺さっていた100円玉、カバンの底やコートのポケットでジャラジャラ言ってるそいつらを、どうかこの妖怪にお渡しください。
一定数まとめて軽やかな紙状のお札に封じ込める能力をおいらは持っています。

1/9 〜 2/5

あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

年を跨いですっかり過去のできごとのようですが、ワールドカップ面白かったですね。
放送時間が夜型人間にとってのゴールデンタイムだったこともあり、大会の終盤あたりから夢中になってしまいました。
完全なる「にわか」です。
その中で、ディフェンスラインを「上げる」あるいは「下げる」という言い回しを覚えました。

商売においては「顧客の需要に応える」ことがディフェンス、「新たな需要を生み出す」ことがオフェンスだろうと考えます。

星屑にとってのオフェンスは、他の都市に比べて夜が早いと言われるここ名古屋で夜型喫茶を定着させること。
しかし現実はそう甘くなく、とりわけ冷え込みが激しくなった12月から夜がなんとも寂しい感じで、そのぶん15:00の開店直後にご来店が偏って満席パニック状態になりがちです。

サッカーを観ながら「いったんディフェンスラインを下げてみるか」なんて監督視点で思いました。
パニック状態が続くとパフォーマンスが下がって失点しがちですからね。
そんなわけでしばらくの間14:00 – 22:00で営業してみます。

ずいぶんと風邪が流行っているようです。
私も先週寝込みました。
未だ本調子でないので今月は休み多めで失礼します。
皆さまも星屑をお手本に、くれぐれもご無理なさらぬよう。

年末年始

コロナを機に「おひとり専用喫茶」を始めて丸2年。
当初はそう長くは続けられないだろうと見込んでいましたが、おかげさまで店はなんとか成り立っています。
「おふたりOK」時代と比べると売上◯◯%減。
水面すれすれの飛行ながら、そろそろブルーインパルスからスカウトされるんじゃないかというほどに安定感は抜群です。

まだそんなにコロナ気にしてんの?
たまにこう言われたりしますけども、今となってはもはやコロナは関係ありません。
どういうことかというと……。

「街の中に静かな空間を作る」
これが開業にあたっての最たる目標でありましたから、初年度よりそのような店づくりを心掛けて参りました。
しかし「静かさ」というのは単純なようで実現するのは思いのほか難しかった。
ちょうど愛煙家と嫌煙家のように、会話を楽しみたい人と静寂を享受したい人というのは同じ空間を幸福なかたちで共有することができません。
千客万来というスタンスは必ず誰かに我慢を強いる結果を招いてしまいます。
だからといって細かなルールを設けてみても万人に周知徹底するのは不可能に近い。
弊店の場合は声量を注意せざるをえない場面が頻発してしまっていたわけですが、誰ひとりとして悪意があるわけではないのでこちらとしても申し訳なく胃が痛い……。
etc. etc…

そんな諸問題が期せずして「おひとり専用」というシンプルな線引きによってあっさり解決してしまった。
加えて、アイデア自体は誰にでも思いつく陳腐なものでも、がっつり実践している店は全国的に見ても希少らしい。
なにそれ、ちょっとやりがい感じちゃう。
そう思って続けているというのが実際のところです。

そんなわけでひとまずは2023年も「おひとり専用喫茶」でスタートする所存です。

ちょっと気が早いですけど、みなさま良いお年を。

11/1 – 12/4

「高低差ありすぎて耳キーンなるわ」という有名なフレーズがありますけれども、珈琲店では「気圧」ではなく忙しさと暇さの落差が激しすぎて耳キーン状態になることがあります。
10月はそんな日の連続でした。

いや、愚痴りたいわけではないのです。
まがりなりにも5年やっておりますので、こういうことは初めてではありません。
原因を考えてみても仕方がないし「天気」みたいなもので誰が悪いわけでもない。
これは「運気」の問題なのだと割り切っています。

考えてみると「気」という漢字の付く言葉は文字通り気体のようでコントロールが難しい。

「雰囲気」「空気感」
カフェについて語られる際に多用される単語には曖昧なものが多いですが、それもそのはず、そもそもお客さんがカフェへ行くかどうか決めるのもその時の「気分」次第です。
生きる上で必須のものではありませんからね。

いやはや、なんとも緩い地盤の上で成り立っている商い。
いやしかし。
見ようによっては焙煎という作業も立ち昇る水蒸気と煙を見つめたり嗅いだりする、気体を扱う仕事ではないか。
弊店が相手にしている対象って、実はほとんど「気」にまつわるものなのではないか。

店内にお客さんのいない時間、こんなことに思いを巡らせた10月でありました。

おひとり専用・そして夜型。
この商売的二重苦を背負って(良かれと信じてやってることですが)、11月も曖昧さの中を泳いで参ります。
なにかの拍子に「気」が向いたら覗いてみてやってください。

10月の予定

毎度お知らせが遅くなりました。
10月の営業スケジュールはこんな感じです。

とある店休日、焙煎と仕込みの合間に小腹がすいてコンビニでサンドイッチとスムージー的な飲み物を購入したところお会計が750円でした。
特に値段を気にすることもなくレジへ向かった私ですが、頭の片隅ではぼんやり500円未満を想定していたので一瞬「?」となってしまいました。
もちろん店員さんのミスではありません。
ものの値段がいつのまにやらこのくらいの水準になっていることに平素ボーっと生きている私は軽い驚きを覚えたわけであります。

同日、作業をしながら聴いていたラジオでちょうどニューヨークの物価についての話題が出ました。
コンビニでこれといった特徴があるわけでもないシンプルなハムサンドを手に取ると平気で8ドル、日本円で1000円を超えてくるのが当たり前であると。
外食産業の上昇っぷりはさらに顕著で、ファミレスレベルでも1人あたり10,000円を超えることが珍しくないらしいです。
では皆が皆それ相応に稼いでいるかというと必ずしもそうではなく、シェアハウスで自炊がデフォルト、外食なんてしませんよ、という層もかなり増えているとのことでした。
数時間前に500円未満を想定していた自分がちょっと恥ずかしい。

いったいお前はなんの話をしているんだいと思われるでしょう。
端的に申しますと弊店でも徐々に値上げしていきますということです。

昭和生まれの私(いや、あえて我々と言おう)には一つの大きな基準値があります。
「不二家のショートケーキ250円」
これです。
幼少期に植え付けられたこの基準のせいで、私はレジで「コーヒーとケーキ、合わせて1020 円です」とか言うたびに内心自分で「高いなぁ」と思っています。
しかし実際のところは高くないどころか昨今の原材料費を考えるとむしろ割安なくらいなのです(クオリティについては考慮しないでくださいね)。

「喫茶店で1,000円? 高くない?」
そんな昭和生まれスピリットは当の私にも未だ健在ではあります。
しかしそんなことを言い続けてたら早晩店が立ち行かなくなる。
一気にそんな時代になってしまった。
だから皆さん、ここはニューヨークスピリットで行きましょう。
え? 嫌ですか?
いや、あの、ニューヨークが極端であるならば間を取ってハワイスピリットでどうでしょう?
(と思って調べてみたらハワイはさらにすごいっぽい!)

いつにも増して長くなってしまいました。
いかな理由があろうと値上げというのは罪悪感を伴うものです。
後ろめたいと人間はよく喋りますね。

引き続きご愛顧のほど、ご無理のない範囲でよろしくお願い申し上げます。

9/5 〜 10/2 の予定

お知らせが遅くなりました。
今月は写真のようなスケジュールで営業して参ります。
画像が荒くてちょっと見づらいですかね。
営業時間は15:00 – 22:30。
定休日は月火水。
例外として9/19(月・祝) と9/28(水)は営業します。

誰か著名人が亡くなった時に、あくまで自己満足の範疇ではありますが、店内でささやかな追悼をすることがあります。
さくらももこ氏が亡くなった時は『コジコジ』を本棚の目立つ位置に移動させたり、「ボサノバの神様」ジョアン・ジルベルト氏の時にはBGMをジョアン・ジルベルト縛りで一週間ループ再生させたり……。
本当にささやかすぎるので誰にも気付かれたことがありません。

しかし先月お亡くなりになった精神科医・中井久夫氏の場合は違いました。
私の所持していた唯一の著作をポンとカウンターに置いてみたところ、とても多くのお客さんから反応があったのです。
しかも皆さんその反応の仕方に少なからぬ熱がこもっていて、「中井先生大好き」「すごく優しい人」「この人の本に救われた」といった、内容というより人間性にまつわる言葉が多いのが印象的でした。
一冊しか読んだことのない私はそ、そうなんですね、といった感じになってしまいましたが、これを機に次の一冊を読んでみたくなっています。

ちなみに、ある人が中井久夫氏の著作について書いた短い書評の中に次のような一節が登場します。
「社会のなかに住まいつつ、それでも誰の手下にもならず誰も配下にしない戦いと抵抗と孤高の生を生きようとするならば、あなたはこの本を読まなければならない」
私はニートをしている時にたまたま読んだこの一文にガツンとやられ、誰の手下にもならず誰も配下にしない生き方を自分もしようと決意しました。
ニートのくせに生意気ですね。
そして結果しがないコーヒー屋。
良かったんだか悪かったんだか。